教祖の後継者問題で揺れる宗教団体「惟霊講会」。事故や火災で亡くなったはずの信者が生きているところが目撃されたという噂もある中、自称ヨーガ行者のガンジーは、ひょんなことから後継者選定のための断食行を指導することになるが……。
反社会的なわけではなくとも閉鎖的な宗教団体、その内側で渦巻く様々な欲望と、ものすごくドロドロした話にもなりそうな設定なのに、実際作中の事件自体は相当残酷な陰謀のはずなのに、主人公とその弟子たちの飄々としてかつとことん前向きな性格と行動力のおかげであっけらかんと読めてしまいます。
そして彼らが出会う惟霊講会の教祖の手記、「しあわせの書」。よくある布教のための本と思われた文庫サイズの小冊子ですが……これ以上はネタバレになるので書けません。どうぞ実際に読んでお確かめください。
さて、普通にミステリとしても面白いのですが、この本にはさらにおそるべき秘密があります。
私は初めて読んだときそのあまりの凄まじさに呆然としました。正直、本の現物を前にしても未だに信じられません。一体どんな脳みそをしていたらこんなことを思いついて、しかも実現できてしまうのか、ちょっと想像を絶しています。
ちなみにヨギガンジーシリーズのもう一作『生者と使者』の方にもまたとんでもない(以下自主規制)。いや本当にこの著者の頭の中はどうなっているのでしょうか!?
どうか、未読の人に「しあわせの書」の秘密を明かさないでください。
明かした者はミステリファンの無間地獄に落ちて未来永劫責め苛まれることになります。そのくらい赦されざる大罪ですので、絶対に絶対にやらないように! それだけは伏してお願い申し上げます。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
新潮社
ISBN/JAN
9784101445038