主人公青山霜介は高校生の時に両親が亡くなり、叔父夫婦と暮らしていたが唯一の家族である両親の死に対して心を閉ざしてしまう。そんな彼を心配するがどうすることも出来ない身近な大人達は、内部進学出来る大学に進学を勧めて大学生活が始まります。内部進学すると同級生は他大学に受験をして高校時代の彼を知る者がいない事で積極的に人と関わらない霜介にも新しい友達が出来きます。そんな霜介が友人に頼まれた展覧会の設営を手伝う所から話は始まります。その設営が水墨画の展覧会であり、展覧会で水墨画の大家の湖山氏に彼は内弟子にスカウトされて水墨画を描き始めます。その時、湖山氏の孫娘と出会い水墨画の賞レースに挑まされます。そんな、霜介に対して湖山先生は、今までと違う形で教授します。それは、読んでいて導いていくといった様に捉えました。導かれて水墨画を描き続けていくうちに彼は自身の心と向き合う様に導かれていく様にも読めました。
水墨画を知らない私にもわかる様に主人公に水墨画を説明するくだりが読み易いだけでなく水墨画に必要な本質である身体の使い方や見方を話の端々に織り込まれています。そして、本質には言葉では伝えられない命を見ると言う事がありそれを主人公の心の傷を向き合う事で表現している所が読み応えあり、ただ単なる絵画小説という枠を超えている様に思ました。それは、著者が水墨画家だからかもしれません。そして、線は、僕を描くはまさしく、水墨画が自分の思う通りにならず、自分が投影されることが表されています。そんな話をお楽しみ頂ければ幸いです。
(山岡)
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出版社/メーカー
講談社
ISBN/JAN
9784065238325