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裏世界ピクニック

宮澤 伊織(著/文)

 
怪談好きの女子大生の紙越空魚は、廃墟探検中に偶然発見した異世界で死にかけていたところを仁科鳥子に助けられた。彼女はここで行方不明になった友人を探しているという。
「くねくね」「八尺様」「きさらぎ駅」……ネットロアに語られる様々な怪異が出没する、不条理で危険で謎と魅力に満ちた<裏世界>の奥深く、空魚と鳥子は足を踏み入れていく。「この世で最も親密な関係」を少しずつ深めながら。
女の子ふたりによる異世界探検ホラーSF。


空魚と鳥子が冒険する裏世界は、そこここに怪物が出没し、ただ足を踏み入れただけで命に関わる罠のような箇所が点在する、とても危険な場所です。ふたりは何度も化け物に襲われたり発狂しそうなほど恐ろしい目に遭ったりしながらも、迷わず何度も探検に向かいます。お弁当を作って持って行ったり、農機を持ち込んで足にしたり、キャンプを試みたり、とても楽しそうに、本当にタイトル通りのピクニックのような気軽さで、ひとつ間違えれば二度と戻れないかもしれないことを承知の上で。


正直、現実にいたら「……大丈夫か、この子たち」と心配になってしまう(実際、作中でも他の登場人物から何度も言われています)ふたりなのですが、そうなる理由はそれぞれにあって理解できるし、孤独で他人を拒絶していた彼女たちが、互いの存在を得て少しずつ変化し、ぶつかり合ったり複雑微妙な感情をこじらせたりしながら成長していく様は感動的です。共に危うい部分を抱えているふたりが何度も危険を冒しながら元気に生き延びていられるのは、「ふたりだから」なのです。


ちなみに私は、こんな怖いところには絶対に行きたくありません。けれど、どこまでも広がる誰もいない草原、青い光に覆われた世界の果ての海岸、沈まない夕日に照らされたゴーストタウンなど、その光景のイメージは恐ろしくも時に凄絶なまでに美しく、魅了される気持ちが分かってしまいそうになるのです。(河内長野店 樽野)




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  • 出版社/メーカー


    早川書房




  • ISBN/JAN


    9784150312640








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