昇進を諦め隠居を考えていた仙人、太白金星・李長庚は、観音菩薩から天竺に向かう玄奘に課す劫難の企画立案を押し付けられた。面倒な仕事に続出するトラブル、仏門にも道門にも見え隠れする不穏な気配、孫悟空に立場を横取りされたと訴える猿の妖怪……様々な問題に悩まされつつ、李長庚は東奔西走して玄奘の旅を支え続ける。
『西遊記』の裏側には、社畜仙人のかくも涙ぐましい悪戦苦闘が!
中国四大奇書のひとつ『西遊記』、日本でも知らない人はいないであろうかの一大冒険ファンタジーを、裏から見るとどうなるか!?
まず何よりあの大冒険の大部分がお膳立てされた茶番であるという設定が面白すぎませんでしょうか。ていうかどこの世界も経費計算だのノルマだの不正だの派閥争いだの足の引っ張り合いだの世知辛いなあ、道門はまだしも仏門はそんなことで良いのか悟りはどこ行った!? と、読みながらずっと感動と笑いが止まりませんでした。
玄奘一行は孫悟空にも猪八戒にも沙悟浄にも玄奘自身にも、それぞれ裏の思惑や事情があります。李長庚はそれらに少しずつ触れながら、次々起こるトラブルを解決していきます。「表側」である『西遊記』の物語との絡み方も絶妙で、見事の一言です。
主人公は暇さえあれば愚痴をこぼしながらも非常に有能かつ老獪で、色んな意味でものすごくできる人です。自分を良いように使おうとしていた観音菩薩と丁々発止やり合ったかと思えば共に問題を乗り越えることで戦友めいた絆を結び、また自身の仙人としての修行とかつて仙界で起こった事件の真相との間でも揺れたりします。
そして旅の結末は……仙人や仏様だけでなく人間の感覚でもじわっとくる彼らの決断に加え、最後の最後に来るオチが、本当に最高です。良いんですかこれ!?
かつて 『西遊記』に心躍らせた方は、是非とも新たな感動を味わってください。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
早川書房
ISBN/JAN
9784150020118