人一倍怖がりでホラーも怪談も苦手なのに「視えてしまう」体質の大学生八神森司は、高校時代からの片思い相手である灘こよみに誘われ、彼女と一緒にいたい一心で「オカルト研究会」に入部してしまう。
オカ研には大学内やその周辺から奇妙な事件に関する相談が持ち込まれ、森司は嫌々ながら巻き込まれる羽目に……。
大学を舞台にした、青春オカルトミステリのシリーズです。
個性的なオカ研メンバーたちの掛け合いが楽しく、部長の語るオカルト薀蓄も毎回面白くてすらすら読めます。様々な事件の解決方法も基本的に救いがあって読後感も爽やかです。
誰がどう見ても両思いで、オカ研仲間を始め周囲の人間おそらくほぼ全員から「さっさとくっつけ」と思われていそうなのに、双方へたれなせいで、かたつむり並の速度でしか距離が縮まらない森司君とこよみちゃんの関係も、最初はじれったくてイラついたのですが、巻を重ねるうちに一周回って微笑ましくなってきました。うん、君たちはもうそれで良いよ。
ただし。著者は人間のダークサイドを残酷なまでに情け容赦なく抉り出す作品を書く方です。本シリーズのような比較的ライトな作風でもそれは変わりません。表紙イラストの可愛いこよみちゃんや日常パートのほのぼのにうっかり騙されると、ふとした隙にざっくり刺されて痛い目に遭います(註:褒めています)ので、ゆめゆめ油断なさいませぬように。個人的に、オカルト的事件の数々以上にそちらが怖いです。(河内長野店 樽野)
フェア/カテゴリ
書店員おすすめ
出版社/メーカー
KADOKAWA
ISBN/JAN
9784041005385