グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
アマン・スコット 著、糸井 重里 監修・解説、渡辺 由佳里 訳
2011年の刊行以来、何度も重版を重ね続けていた、他のビジネス本とは一線を画した奇妙な書名のビジネス本が遂に文庫化される。本書は書名の通りグレイト・フルデッドというアメリカのロックバンドの音楽活動から、インターネットが主流になった現代でも応用する事の出来るマーケティングのノウハウが学べるという、とてもユニークな一冊だ。
日本ではビートルズやローリング・ストーンズに比べると知名度は今ひとつではあるが、海外での音楽に対しての評価が高いのは一聴すれば頷けるのは勿論、ライブでは毎回演奏する曲目だけでなく曲のアレンジも変え、ライブ中のハプニングさえもパフォーマンスの一つにしてしまい、ライブに行く度に新たな発見がある事から、多くのリピーターを生んでいる。
さらに、グレイト・フルデッドがライブ演奏を営利目的以外でなら客にライブ音源を録音して自宅に持ち帰って音源を楽しんだり、ダビングをして友人知人の手に渡したりする事を許可していたのは有名な話の一つ。
つまり、ライブ演奏を見に来た客自らがバンドの宣伝広告塔になって情報を拡散させ、バンドの知名度を上げる事に自然と貢献してくれていたのだ。
この事からもわかる通り、インターネットの無い1960年代からグレイト・フルデッドはどれだけの人にバンドの名前を目にし、聴いてもらえているかという、webマーケティングで最も重要視されている「リーチ」を非常に意識していた事が非常によくわかる。
本書が重版に重版を重ね続けているのは、グレイト・フルデッドの音楽的な魅力もさる事ながら、グレイト・フルデッドの宣伝活動に関しての魅力にスポットを当てたマーケティングのハウツー本として現代でも十二分に通用するビジネス書へと消化させていることに尽きる。(文教堂 青柳)
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日経BP日本経済新聞出版本部
ISBN/JAN
9784532199708