著者が幼少時代からの半生を過ごした実家の父の本棚から一枚の小さな紙きれを見つけたことを発端にこの物語は始まる。
「だまされた」
『シベリアの悪夢』と書かれた本に挟まれたそのメモ書きには、「私の軍隊生活」と書かれた簡単な記録と、戦時から戦後にかけて父が辿った、日本列島からユーラシア大陸にかけての地図が印刷されていた。
著者は日本から朝鮮半島へと渡り、中国からシベリアまで。父が辿った航路を辿ることで、今もなお侵略された側に残る戦争の爪痕を知ることになる。そして戦後に父親が拘留されることになったシベリアへと近づいていくにつれて、父への思慕だけではなく、「だまされた」という言葉に込められた本当の意味に近づいていく。
多くの命を奪い、深い悲しみと半世紀以上経った今も禍根を残し続けている戦争は、どうして起こったのか。
さらには人間とは、どうして争いを繰り返し続けてしまう生き物なのであろうか。
この亡き父の遺したメッセージから始まった著者の旅路を、一人でも多くの日本人が読むことによって、戦争の本当の被害者について考えてもらいたい。それで戦争を知らない世代がほんの少しでも関心を抱いてくれたらならば、この本の価値は計り知れない。
物やお金に換えることのできない、かけがえのない私達の学びの財産を増やしていくためにも、自宅で過ごす時間を未来の自分への投資にできるように、本書で「なんのために学ぶのか」を学んでもらえたら嬉しい。(文教堂 青柳)
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9784838730971