「最高にコミカルでワイルドなおっさんたちの織り成す日常が最高にCOOLな一冊『ワイルドサイドをほっつき歩け』」
昨年に本屋大賞ノンフィクション大賞で堂々の1位を獲得し、その後も各メディアで取り上げられ、
刊行されて1年以上経った今も尚、文芸書売り上げランキングの上位を維持し続けているベストセラー『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の著者ブレイディみかこの最新作は、英国で生活する中年オヤジ達について書かれたエッセイだ。
今年EU離脱が正式に決まったばかりの英国だが、本書はまさにその離脱直前で揺れる庶民の生活が可笑しくも切実に刻まれている。
離脱か否かで懊悩し、派閥によって友人、知人、時には家族までもが殴り合いの大ゲンカになってしまうことが当たり前のように起こる彼等の生活は、まるで映画のワンシーンのようだが、それが今の英国の実態なのだ。
著者は過去にも『アナキズム・イン・ザUK』や『ヨーロッパ・コーリング』等で今、現在進行形の労働者階級の人々を語ってきたが、今までで最もユーモラスで、エンターテインメントに、そしてドラマティックな作品だと思う。
それは、本書に登場するオヤジ達が個性的で滑稽だけれど、どこか哀愁を感じさせるからなのかもしれない。
さらに本書の後半では今の英国の世代や階級、生活について分かりやすく解説してくれているので、英国の映画や小説、音楽を今まで以上に深く楽しめる1冊になっている。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で著者を知った方も多いとは思うが、本書をきっかけにしてフィクションではない英国のワイルドサイドな日常の実態を、小説を読むように楽しんでもらえたら最高だ。(文教堂 青柳)
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出版社/メーカー
筑摩書房
ISBN/JAN
9784480815507