高校生のイケメン&スポーツマンがSNSでゲイの告白。
誰からもアイドルのようにもてはやされる憧れの存在のカミングアウトだからこそ、全校生徒はざわつき、教師は対応に追われる緊急事態に。
思春期の少年の同性愛のカミングアウトという、重たくなりがちなデリケートなテーマではあるが、それでも爽やかな読後感だった。
それは、周囲にいる人物からの視点で塚森に対する感情を描いているからこそ、一つの価値観に凝り固まることのない考え方で、塚森という人物を深みのある魅力的に描かれているからだろう。
劣等感の塊の僕と同族の親近感として、大好きな憧れの先輩として、同じ同性愛者の娘を持つ親として、バスケットプレーヤーとして尊敬先輩として、悲喜交々の感情が「そりゃそうなるよな」と、納得できる形で語られているからこそ、最後の塚森君の葛藤や悩みが、痛いくらいに伝わってくる。
誰にも分ってもらえない、分かってもらいたくても言葉にならない感情を、誰しもが一つは抱え込んでいると思う。
そんなモヤモヤとした気持ちをSNSに吐き出すことも大事だけれど、自分の気持ちと向き合う時間も大事なんだということを気づかせてくれるだろう。
読むと前向きな気持ちにさせてくれる、最っ高に無敵でカッコ悪い青春が詰まった、気持ちの良い物語だった。(文教堂 青柳)
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幻冬舎
ISBN/JAN
9784344036901