文教堂 | 株式会社文教堂の公式サイトの商品ページです。一般書籍から専門書籍、文具、雑貨まで幅広い書籍や雑貨を掲載しています。

株主様専用
通販サイト
店舗一覧 IR情報

商品情報

BOOKS & GOODS

彼らは世界にはなればなれに立っている

太田愛/著


 『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』この三作ですっかりおなじみになった鑓水・繁藤・相馬の三人は登場しない。
最新作は、どこかの国の〈始まりの町〉が主な舞台となっています。
 初等科に通う少年トゥーレは父母と暮らしていますが、母親が町の人から羽虫と蔑まされる存在のため、学校でも辛い思いをしています。元々の住人と、よそから来たという人の間に何があるのか、幼い者でも理解している様子が見て取れます。



 かつて町にあった中央府は、始まりの町を捨て他の町へ移ってしまった。それでも誇りを持つ続けるために羽虫を蔑み公然と差別をする町の人々は醜いとしか言いようがありません。
 20年ぶりに客船が入港し、人々は浮かれます。歓迎の祭りの場で、トゥーレの一家に向けて痛烈な悪意が向けられ、その後トゥーレの母親は失踪してしまいます。
 羽虫と呼ばれる人々を中心にして、物語が加速していくかのよう。幼い時に始まりの町におきざりにされたマリ、情報収集をこなす葉巻屋、怪力と呼ばれる男、修繕屋、魔術師などの元々の住人ではない人々はこの町でどのように生きてきたのだろうか。
 圧巻は後半に待っています。戦争の影がひたひたと忍び寄る町。そんな中で羽虫たちを救おうとする企てがあり、祈るように見守ってしまう。トゥーレの母親の失踪の真相が読者の前に立ちはだかる。なぜ母親はあることを決断したのか!息子を思う時、それ以外の決断はなかったと言えましょう。人間はどこまでも残酷になれる生き物だから。
 最も恐ろしいのはどういうことかを思い知らされる。人間は、自分たちは間違いなんて犯さないと信じている。それだけではなく、なんと!ふと昔を思い出し、またあの頃がやってくると夢見るようになってしまう有様。私たちは、そんな彼らを笑えるのだろうか…
 絶対に読んだ方がいい。登場人物たちの内面がどれもこれも悲しいけど。それでも読んだ方がいいと思いました。(新札幌DUO店 若木)




  • フェア/カテゴリ


    書店員おすすめ




  • 出版社/メーカー


    KADOKAWA




  • ISBN/JAN


    9784041095652




注目商品に戻る

BOOKS

文教堂おすすめ本

STATIONERY

文教堂おすすめ文具