読み終わった時、向日葵が怖くなった。445 頁全ての映像が頭に浮かぶから。
みのりと怜と隼人による青春の形は、儚い。
胸をぐわと掴んでくる何かがそこにはある。
大人になることだけが正しいのか。
大切な人を愛するが故の過ちは許されるのか。
向日葵を手折るのは、読み手自身なのかもしれない。
みのりや怜、隼人が子供と大人という境目に囚われながらも真っ直ぐに届ける愛は、大人になっても決して忘れてはいけないものだ。
大切な人を守ってあげたいと思うのは、誰かに守ってもらった礎があるから。
彼女らの青春をじっと見つめていたら、目の前にいる人と、今の生活を抱きしめたくなった。
表紙に惹かれて手に取ったそこのあなた、大正解。
本の重さと清らかに整列する活字の多さとに驚き閉じる前に、読んでほしい。
みのりの見た世界は小さいのに、どこか現実味を帯びている。
日本特有である地域の連帯感や、家族愛に共感を覚える。
でも何か私たちの世界とは違うものが向日葵の中にある。
青春とミステリーと恋愛と家族と。1 人の人生におけるたった数年間を描いているのだけれど、もうどうしようもなく彼女の幸せを願いたくなる。
これはきっと私たちにも言えることで、日々の中にあるほんの些細な出来事がこれからの自分のいつかを変えて、幸せの欠片になる。変わる今を怖がらないで。(溝ノ口本店 山根)
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実業之日本社
ISBN/JAN
9784408537672