この小説は、いくらあがいても想像力が思い込みの域を出ないことと、
相手を理解しあえるという自負には傲慢さが隠れていることを突き付ける。
相手の悩みは恐怖や苦しみを覚悟して剥き出してくれたものであるということに無自覚であること。
その悩みが理解できるもの、つまり納得や共感できるもの、のはずだという思い込みをしているということ。
その悩みが納得や共感しがたいものであると理解することを放棄し、その悩みが恐ろしいものであるように不気味がること。
これほどまでに親切なふりをして横暴になることができるのは、
おのおのが抱え不安に思っている「正しさ」ゆえだった。
朝井リョウの本気の小説を、私は本気になって読まなければならないと思った。
(東陽町駅前店 大塚)
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出版社/メーカー
新潮社
ISBN/JAN
9784101269337