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死にたいけどトッポッキは食べたい

ペク・セヒ/著 山口ミル/訳

「自己肯定感」という言葉を書店の棚や平積みで見かけるようになってから数年が経つ。最近ではビジネス書や女性エッセイ等と一緒に自己肯定感に関する本を購入するお客様も増えていて、自己肯定感という言葉がより身近になってきたことを実感する。この言葉の普及は日本国内だけではなく、隣の国に於いても例外ではない。



数年前からフェミニズムを中心に、社会で他者とのコンプレックスを抱えて生きる等身大の現代人を描いた作品が日本で話題になったことからも分かる通り、集団生活における自己と他者を比較して何かしらの劣等感を感じて苦しむ人々が世界に数多と存在する。



本書はうつ病の症状が長期的に続く「気分変調症」という精神病を抱えた著者が、精神科医の先生(以下「先生」)との対話を通して病と向き合い、そして自己肯定感を高めるための心の在り方、そして他者とのコミュニケーションの取り方を学んでいく。



著者が「気分変調症」と診断されたのは今から十年以上も前。この病以外にも不安障害を抱えながら5年間編集者の仕事を勤めてきた。



診断される前は、幼い頃から内気で小心者だったから、生まれつき自己肯定感の低い憂鬱な人間なのだと思い込んでいた。けれど社会に出て環境が目まぐるしく変わっていく中、他人に対する恐怖心や不安感が人一倍強いことを自覚し、精神科を受診する決心をする。その時の先生とのカウンセリングを元に本書は構成されている。



著者は先生との対話の中で、過去を振り返りながら家族のこと、知人友人のことを語る。



小中学校の頃にいじめに遭った思い出や、大学生時代に外見のコンプレックスから友人や恋人との付き合い方に悩んだ話。社会人になって、十代の頃に思い描いていた将来の自分と現状とのギャップに苦しんだこと。先生は著者の様々な話を聞いては、著者が抱えている不安や悩みの根元がどこにあるのかを探っていく。著者は話ながら時に涙を流し、時に声を荒げて怒りを露わにする。



けれど先生は困惑することも話を中断することもなく著者の言葉に耳を傾ける。自己肯定感が低い故に陥ってしまうネガティヴな思考回路を無理やりに捻じ曲げるのではなく、著者の悲しみや苦しみを真摯に受け止め、その時々の感情や行動が決して特別な感情ではないことを、分かりやすい言葉で説明してくれる。物事は全て白黒だけでは決められないことや、容姿には誰しもがどこかしらコンプレックスを抱えているということ。



他にも様々な著者の抱えている悩みや苦しみに丁寧に受け答えてくれていて、その対話の殆どが、誰しもがかつて経験したり、今実際に直面したりしているような話ばかり。だからこそ私達は著者の気持ちや心の奥底から必死に絞り出した言葉が痛いほど分かるのだ。



「結局、この本は質問でも答えでもない、願いで終わる。私は愛し愛されたい。自分を傷つけなくていい方法を探したい。“嫌だ”よりも、“いいね”という単語が多い人生でありたいと思う。失敗を積み重ねて、もっと良い方向に目を向けたい。感情の波動を人生のリズムだと思って楽しみたい。巨大な暗闇の中を歩いて、どんどん歩いて、偶然に発見した一条の陽の光に、ずっととどまっていられる人になりたいと思う。いつの日か。」



この先生との対話の後に記された、「大丈夫、影のない人は光を理解できない」という題が付けられた文章の最後に著者が語っている通り、著者は気分変調症を克服した訳でもないし、読者に対して明確な答えを提示している訳でもない。



本書を通して語られている自己肯定感。つまり、ありのままの自分を受け入れて生きていく為の覚悟は結局のところ自分次第だということだ。けれど、本書は間違いなく背中を押してくれるための勇気を与えてくれるはずだ。


(2020/3/18「本がすき。」掲載:文教堂 青柳)




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    9784334951375







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