1970年12月3日、恋人と親友に裏切られ、絶望したぼくは、ひとつのネオンサインに惹きつけられた。「冷凍睡眠保険」。
全ての悩みを眠って忘れて、遠い未来の新世界で目覚めることに、ぼくは希望を見出す。愛猫ピートが冬になると探し始める、夏へと続く扉のように。
「古今東西SF傑作ベストテン」的なものがあったら確実に名が挙がるであろう古典的名作です。正直個人的にハード系のSFは苦手なのですが、この作品は技術や理論面の難しい話はそこまで出てこないので楽に読めました。SF初心者にも読みやすいと思います。
主人公は打ちのめされた状況で物語は始まりますが、案外いい性格をしているというか、前向きでたくましくかつ頭が良くて行動力もあるので、割と早い段階で「あ、この人大丈夫だ」と思いました。安心して見ていられます。
ついでに、彼が自分を裏切ったかつての恋人に対してした「復讐」は、多分本人には全くそんなつもりがなく、意識してすらいないがゆえに、一番効果的で辛辣な仕打ちになっているかも。二重の意味で。
さらに加えて、前半不可解に思ったり矛盾を感じたりした点が、後半になって次々にきれいに解き明かされ、見事に辻褄が合っていく様はものすごく気持ちよく、良く出来たミステリの解決編を読んでいるようです。もちろんSFならではの解決ではあるのですが、ミステリ好きの方にもおすすめです。
あと、もちろん猫好きの方にも。護民官ペトロニウス氏が可愛いのです。
(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
早川書房
ISBN/JAN
9784150123093