暑い。
旅も容易でない。そうだ!本屋で買った「チケット」を使えば、
冷房の効いた自室から、緑陰から時を超えて好きなところへ行ける。
今日用意したのは「レーエンデ国」行き。
どこにあるの?わからない。
時代は?いつだろう…。
でも、こんな風に出迎えてくれる。
「おかえり、おかえり、待っていたよ。貴方が来るのを待っていたよ」
ファンタジーをたしなんだことがない人をも柔らかく受け入れてくれる。
物語は、騎士団長ヘクトル・シュライバとその娘ユリア。弓の名手
トリスタン・ドゥ・エルウィンを軸に展開する。
貴方はユリアとトリスタンのピュアな関係がもどかしくため息をつく。
著者よ、この二人の未来をどうか明るく照らしてあげてと祈るだろう。
ヘクトルとトリスタンの掛け合いに微笑んでいると急転直下一気に
加速する戦闘シーンにアドレナリンが出まくるであろう。
臨場しているようだ。
これらは、舞台である呪われた土地レーエンデの繊細な描写があって
こそ成り立つ。洗練された美しい日本語で綴られた山、木々、花、
生き物たち。魅了されずにはいられない。
書店のPOPにしばしば「一気読み必至」の文言が躍る。この本に
はあてはまらない。1秒でも長くこの世界に浸っていたかった。
だからゆっくりゆっくり読んだ。それでも足りなくて続けて2度読んだ。
492頁。総てが愛おしい。(溝ノ口本店 太田)
フェア/カテゴリ
書店員おすすめ
出版社/メーカー
講談社
ISBN/JAN
9784065319468