「ウィルス学者さん、うちの国ヤバいので来てください」の題名に目を止め、そのまま視線が帯をとらえた時「逃げ出す医師、道に転がる遺体、過激派の襲撃」まるで、ウォーキングデッドか何かのパニック映画の様な宣伝文句が謳われていて、本当(まじ)かと思い積読本に加えるべく手に取りました。
読み始めると、WHOのコンサルとして西アフリカのリベリアにエボラ対策に行かれた話から、ご自身の医学生時代と研究者時代、また、2020年のコロナ対策に参加した話と感染症専門家としてどのように歩んできたのかも書かれており、かなり読み応えがありました。
前にも述べたようにWHOでコンサルとして活動していた事だけでなく、WHOが担うサポートや他の国際支援組織のサポートやその関連性などが書かれています。特に、WHOが現地と協調を大事にしているために、WHO側は医療関係者のみならず、文化人類学関係の方々と力を合わせて現地の感染症を収拾すべく立ち回る事がかかれています。この本の中で古瀬先生自身も人と繋がりを作る為のやりとりの一部を書いてくれていますが、その場所を読んだ時に海外映画やドラマでやっているやり取りを思い出し『おおー、まるで映画かドラマみたい』とミーハーな事を失礼ながら思ってしまいました。
WHOの話だけでも面白いのですが、古瀬先生がなぜ感染症の専門家になったのかというご自身の話につながる医学生時代や研究者時代の話も普通の医学生と違い面白い人生の歩みだったようで、章立ての題に「中2病の医学生研究生」や「全米デビュー」などウィットに富んだ名前を付けられています。また、この中でこれから研究者としてキャリアを積む人たちへのエールとしてご自身のキャリア失敗を含めて赤裸々に書かれているのはすごいと思います。
コロナ対策にも中の人として活動されていて、この時の話もかかれています。こちらは正直、面白い話は殆どないけれども、実際コロナ対策ではどのような状況だったのかを古瀬先生が知りうる範囲の事やこれは問題だったのではと思われたことなどが書かれていました。また、古瀬先生がWHOでパンデミック対策をした時と日本のパンデミック対策で感じたり、考えたりされた事も書かれていました。
『おわり』にで「感染症対策に関わってきた体験を赤裸々に書かせてもらった」を目にした時、本当に赤裸々だったよ。と思う私がそこにいました。だから、医療関係者でもなく、海外で仕事なんてしない私にはとっても新鮮で読んで価値があったと思う読書経験でした。(あきる野とうきゅう店 k・y)
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出版社/メーカー
中央公論新社
ISBN/JAN
9784121508089