私は菅原道真。太宰府天満宮の近くの築50年の四畳半アパートに住んでいる。毎朝散歩しながら人々の生活を眺め、現代の平和な世を寿ぎ、合格祈願に来る受験生たちが実力を発揮できるようひっそり力を貸し、他の神々と世間話に興じて日々を過ごしている───。
優しい神々と見守られる人々の、穏やかで心温まる物語。
人間に混じって暮らしている神様や妖怪が登場する話はいくつか読んだことがありますが、神様視点のものは珍しいのでは? と思いながら読みました。神様には神様ならではの苦労も喜びもあるようです。
天神さまは神としての御魂本体は太宰府天満宮に鎮座ましましておいでで、「私」はいわば肉体を持ったアバターであるそうです。そういった存在は何しろ八百万の神々ですから大勢いて、そのへんのコンビニで神様が立ち読みなさっていたりするそうです。
……このゆるぅ〜〜い日本的神様感、大好きです。相当気軽に神様が生まれる国ですし、本屋の神様もきっといらっしゃいますね。拝んでおきます。
千年以上前の人でも神としては新人扱いだったり、格上の神様に振り回されたり(パワハラでは……)しながらも限りなく温かい目で人間たちを見つめ続ける彼らの姿に、読んでいるこちらも優しい気持ちになれます。
我が家の近所にある天神社(受験の際はお世話になりました)に、近いうちにお参りに行ってさらにほっこりしてきたいと思います。卵かけご飯がお好きでパクチーが苦手で週二で図書館に通う(同志!)天神さまに、もしかしたらお会いできるかも。(河内長野店 樽野)
フェア/カテゴリ
書店員おすすめ
出版社/メーカー
産業編集センター
ISBN/JAN
9784863114074