女子だけを集めた演劇学校で、劇作家・演出家として抜きん出た才能を示して「神」とまで呼ばれた天才少女・設楽了が、自分の手掛ける作品の上演中に舞台から奈落に転落して亡くなった。
その翌年、新入生の藤代貴水は「わたしは、設楽了の死の真相を調べに来ました」と宣言する。了のクラスメイトだった結城さやかは、貴水に巻き込まれて調査に乗り出すことに……。
演劇に命をかける少女たちの、学園青春ミステリです。
年齢的には高校生の若さで、俳優あるいは制作スタッフとして演劇に関わるという強い意志と希望を持って奮闘している彼女たち。そして、演出家としてはかなりのパワハラ体質ながら、その圧倒的な才能でどんな横暴も許される扱いを受けていた了。
亡くなった了を中心に、彼女を取り巻く少女たちがそれぞれ抱えているものを、貴水とさやかは暴き出していくことになります。綾乃、綺羅、氷菜、そしてもちろん、さやかも貴水も了も。
それは読んでいて苦しくなるような痛々しさを突きつけてくると同時に、それでも演劇を愛し必死にその道を歩もうとする気高さ清々しさを感じさせてくれます。
ラストは苦い味わいを残しますが、この事件を乗り越えた彼女たちが将来きっと素晴らしい役者や劇作家になってくれるだろうことを予感させてくれます。
そして、私は主人公さやかが書いた『少女マクベス』が、とても観てみたいです。もしかしたら、彼女こそが誰よりも、孤独な天才少女了を正しく評価し、理解できたのかもしれないと思うと、なおさらに。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
双葉社
ISBN/JAN
9784575247480