ホームズとワトスンが暮らしたベイカー街221B。「あの女性」アイリーン・アドラーが住んでいたブライオニー・ロッジ。家の名前が短編タイトルとなっている「ぶな屋敷」や「ウィステリア荘」、「三破風館」。それらはどんな家だったのか?
世界に冠たる古典ミステリの金字塔、シャーロック・ホームズシリーズに登場する英国建築の数々を、日本のホームズ研究の第一人者と建築家が描き出す!
シャーロック・ホームズに関連する研究書は何冊か読んだことがありますが、こういう切り口があったか! と感動しました。何てマニアック(褒め言葉)なんだ! ちなみに私はホームズはもちろん好きですが、シャーロッキアンとはとても名乗れないただのファンです。
正典(原作)の文章を丹念に紐解いて描き出されるイメージが本格的で見事な絵になって表現され、物語の色彩を一層鮮やかにしてくれます。著者は日本屈指のプロフェッショナルのシャーロッキアン、その読み解き方は実に微に入り細を穿ちとことん丁寧で最高にマニアック(褒め言葉)です。図版担当の村山氏や連載された『建築知識』の担当氏とも何度も議論を重ねて書かれたとのこと、ホームズ的にも建築的にも本気度が違うのはずぶの素人が読んでも分かります。建築に関する考察や解説には専門用語もガンガン出てきてそちらもしっかり本格的です。
問題は、読んでいると正典を読み返さずにはいられなくなり、そして正典を読みながら本書を開いて登場する家の間取り図をじっくり眺めてはまた読み返すしかなくなるという無限ループに陥る危険性がある点ですが、超楽しいので考えるまでもなく問題ではありませんでした。面白さが二乗三乗になります。
ホームズ好きの方も、建築好きの方も是非どうぞ。(河内長野店 樽野)
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エクスナレッジ
ISBN/JAN
9784767829777