なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う───。
ふとした思いつきから、何の意味もなく、お金がないのに一等車に乗って、ただ東京から大阪まで行って帰って来るだけの、どこか浮世離れした乗り鉄珍道中が始まる。鉄道好き必読、抱腹絶倒必至の傑作紀行文学。
なんにも用事がないけれど……ええと、この人は一体何を言っているのかな……??? と、最初の『特別阿房列車』の冒頭三行で呆気にとられ、そこからはもう一気にこの世界に引き込まれます。
実のところ、「行って来ようと思う」と言ってからしばらくの間、一等車と三等車に関する理論だの旅費のための借金(貸す方も貸す方という気がしますが)だの延々と引っ張られてなかなか旅は始まらないのですが、その全てがとにかく面白くてたまりません。
文章は堅苦しい感じで、いかにも真面目くさって鹿爪らしく語っている印象なのですが、内容はとことん遊び倒しているというギャップが最高です。一度ツボに入ると一冊丸々腹筋が鍛えられることになります。
やっていることは本当にただ列車に乗ってあちこちへ行っては帰って来る、それだけなのに、道中のドタバタや同行者のヒマラヤ山系氏を始めとした周囲の人々とのとぼけたやり取り、その「ヒマラヤ山系」を始めとして何の説明もなく平然と出てくる友人たちのあだ名、そして先生の偏屈なのか天然なのか判じかねる絶妙にずれた(?)思考回路で徹頭徹尾笑わせてくれます。この独特の可笑しみはどうにも言葉では説明しがたいので、是非ともお手に取って実際に読んでみてください。
ただしひとつだけ。列車旅の話ですが、この本を電車内で読むときはご注意を。公共の場で笑いをこらえて悶絶する覚悟が必要になります。その上で、どうぞ楽しい阿房列車の旅をお楽しみください。
(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
筑摩書房
ISBN/JAN
9784480037619