宝石商の跡取りである大江頼任は、合コンで出会った宝石職人の黒江彩(クロエ)に心惹かれる。ところが、告白のつもりでプレゼントしたエメラルドのピンキーリングを「あたしが着けたい感じとは違う」「絶対着けない」とあっさり突き返され、以来片想いのまま仕事仲間兼友人として付き合うように。ふたりは宝飾デザインを通じて顧客の求めに応えながら絆を深めていく。
宝石商として若くしてなかなか優秀と思われる頼任と、卓越した宝飾デザインセンスの持ち主であるクロエ。主人公は才色兼備の美男美女、舞台は宝石業界、オーダーメイドのデザインジュエリーで顧客を笑顔にさせていく……と、ここまでなら文句なしにきらびやかでスタイリッシュなお仕事ラブコメディですが、上記のような経緯につき糖度は極めて控えめです。
クロエの作り出す個性輝くジュエリーの数々は文章だけでもうっとりするほど格好良く魅力的で、アクセサリーをめったに着けない私でもつい欲しくなります。
が、そんな彼女の才能への褒め言葉が言うに事欠いて「お前のセンスは金になる」になってしまう頼任と、彼のどストレートなアプローチに正面から「ウザい」と言ってしまうクロエ、双方の恋愛偏差値の低さもあって、ふたりの会話はほぼ漫才であり、甘い空気にはほとんどなりません。むしろひたすら笑えます。しかし仕事に対する信頼はお互いに誰よりも深く、安心して読めます。
何より、彼がロマンティックなセリフをぺらぺら並べて彼女を口説けるような人間なら、そして彼女が気に入らないプレゼントを黙って受け取ってしまっていたら、ふたりはこれほど互いを理解し合い、唯一無二の存在になることはできなかったと思うのです。それは甘さよりもずっと、尊いことではないでしょうか。
宝石の美しさと、同じ方向を見て進むことができるふたりの固くて確かな絆に、読んでいて幸せになれる物語です。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
講談社
ISBN/JAN
9784065394595