影が薄いことが悩みの棒手振り八五郎は、ある夜巷で噂の幽霊剣士「鳴かせの一柳斎」の正体が長屋の隣人だと知ってしまったのを皮切りに、次々に知り合いの裏の顔を知ることに。さらには憧れの小町娘が借金のかたに売り飛ばされるという話を聞いて……。
人情味あふれる平穏な下町の裏には、とんでもない秘密の数々が!?
八代将軍吉宗の時代、花のお江戸で気楽な長屋暮らしをしている平凡な庶民が世の裏側に蠢く陰謀に巻き込まれていく物語、なのですが、基本的に主人公の周囲が良い人ばかりで、全体的にあっけらかんとしているため、重苦しい雰囲気にあまりならず気持ち良く読めます。
主人公の八五郎は何の因果か、続けざまに友人知人の秘密を知ってしまいます。凄腕の辻斬りに始まって、その他の具体的なところはお読みいただくとしまして、次から次へと出てくる時代劇の主役級の「実は」のオンパレードに本人も「あまりにも裏の顔が多すぎやしねぇか、江戸の町」と突っ込んでいるほどですが、そんな彼にも地味ながら十分張り合えそうな強烈な「実は」があったりします。
その恐るべき特技だけでなく、いくら親しい友人でも、顔を隠して普段とは全く違う服装や振舞をしている相手を遠目で見て、一目で本人と気付くあなたは絶対にただ者じゃないですよ八五郎さん……。
「実は」一番すごいのは、自分を「地味で平凡なしがない棒手振り」としか思っていない主人公なのではないかと私は本気で思っております。野に置くにはあまりに惜しい人材という気がするのですが、どうにかなりませんかね、特に最後に出てくる「実は」の人(正体は読んでのお楽しみ)。世の中って、奥が深いですね。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
双葉社
ISBN/JAN
9784575671995