香子は悩んでいた。夫を亡くした悲しみを紛らせるために書いた『源氏物語』が好評を博し、時の帝の中宮・彰子に仕える女房として招かれたのだ。彰子の父・藤原道長は、帝の関心を娘に向けるため、『源氏物語』を使いたいらしい。創作に苦しむ中、香子はふとしたきっかけで荒れ屋で暮らす清少納言と知り合う。
その頃宮中ではしばしば謎の人影が目撃され、亡くなった皇后定子の霊鬼であるとの噂になっていて……。
平安文学の二大巨頭たるふたりの女性が宮中の怪異の謎に立ち向かう、歴史ホラーミステリです。
ちなみにタイトルの「大決戦」はほぼ舌戦です。本来は内にこもるタイプの香子(紫式部)ですが、歯に衣着せない清少納言に引きずられてしっかり本音を吐いていて、ふたりの会話を読んでいるだけでも楽しくてたまりません。
ついでに、清少納言が『源氏物語』に対して述べる指摘は手厳しいながら大変的確で、特に若紫に関するくだりは多くの読者が深く頷くと思います。私は正直「よく言ってくださった!」と思いました。さすがです。
道長の政治的思惑の影響で作品を本来の構想とは違う展開にせざるを得なくなったり、同僚の恋愛話からアイディアをいただいたり、創作者の苦悩と喜びもひしひしと伝わってきます。
上司の赤染衛門と相談する様など、「作家と編集者のやり取りってこんな感じなのかな」とも思えて、個人的に霊鬼の謎よりそちらが面白く興味深いです。
あと香子の同僚で天然恋愛巧者の和泉さんが、実に良い味を出していて素敵です。日本文学史上に輝く彼女たちと、友達になりたいと思わせてくれる物語です。(河内長野店 樽野)
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出版社/メーカー
集英社
ISBN/JAN
9784087446081