懐妊中に謀殺されたと噂される妃の遺体が出産しているのが見つかり、幽鬼騒ぎに揺れる後宮。皇后から沈静化を命じられた宦官の延明は、変わり者の女官・桃花と出会った。出世欲も野心もなく、隙あらば寝ようとする猫のような彼女は、怪奇現象としか思えなかった「死者の出産」の謎をあっさりと看破してみせる。
共に傷を抱えるふたりは、遺体の語る真実を読み取って後宮に渦巻く謎と陰謀を解き明かす。
訳ありな宦官と女官が「検屍」の力で宮中の闇に挑む、中華後宮ミステリです。
主人公の一方である延明は冤罪で腐刑(宮刑)を受けて望まずして宦官になった身の上であり、それ故に検屍は「無冤術」であるという桃花の言葉に惹かれて彼女の技術を活かすようになります。
普段はぐうたらでものぐさだけれど検屍の際には別人のように凛として、どんなに無残な遺体にも一切怯まず、どんなに細かな痕跡も見逃さない桃花が、とても魅力的です。そして、冤罪で心身と人生に取り返しのつかない傷を負い、苦しみがらも「冤罪を作りたくない」と願ってあがき続けている延明もまた、とても共感できる人物です。
うわべの華やかさの裏に底なしの泥が淀む宮中で、弱い立場の人間が当たり前のように踏みにじられる残酷な現実に立ち向かおうとするふたりは、どちらも一癖あるキャラクターながら(そこが良い)とても清々しく格好良くて応援したくなります。ミステリとしてのそれぞれの謎も、シリーズ全体の大きな謎も、楽しんでください。
……で、それはともかく、個人的にとても気になるのですが、ふたりの距離は縮まるのでしょうか。友人として、仕事仲間としての信頼は間違いなく揺るぎないレベルになっていくのですが、それ以外の意味では……桃花さんはかなりの天然かつこじらせているようなので、もうちょっと率直に口説かないと永遠に分かってもらえませんよ、がんばれ延明さん。(河内長野店 樽野)
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KADOKAWA
ISBN/JAN
9784041112403